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(院長の独り言)

 信愛クリニックは、患者様の立場に立って、理念に基づく開かれた医療を実践します

◇暑いの反対は寒い、高いの反対は低い、では「病気」の反対は?

●「病気」の対義語は「健康」ではない

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 常識に従えば、「病む」ことの反対は「健康」ですね。健康とは「病気をもたないこと」です。
 例としてコレステロールが高い54歳の男性会社員山田さんについてみてみましょう。

 山田さんは3年前に検診を受けたときにコレステロールが高いと診断されました。山田さんは何も症状は自覚していなかったし、今も体調は大変よいのです。
 月に一回医者のところにいくと、「もう少しコレステロールがさがればいいんですけどねぇ」といわれます。でも山田さんは毎日おいしくご飯を食べて、気持ちよく眠り、仕事もがんばった上で趣味のゴルフを楽しんでいます。

 さてこの山田さんは「健康」といえるでしょうか?山田さんは「高コレステロール血症」という病気を持つから健康ではないのでしょうか?
 高脂血症という病名をもつ山田さんは健康とはいえませんが、病んではいません。もしも山田さんが85歳になって心筋梗塞で急死するまでこのまま気持ちよく生活できたとしたら?
「高コレステロール血症」というラベルこそ貼られたけど、彼の人生はやまいには邪魔されなかったといえます。つまり疾病をもってはいたが病んではいなかったという状態もありうるのです。


●医療が健康を目指すと・・・

「疾病」にとりくむのが医療ですから、医療のめざすところは「健康」すなわち「病気のない状態」と考えたくなります。


ところがこれは非現実的な目標なのです。


 なぜなら「治すことができない病気」が余りにも多いからです。進行癌のほかに糖尿病、高血圧、アレルギー体質、便秘症ですら「治す」ことはできず「症状をコントロールする」ことしかできません。現状では治すことのできる疾患はごく限られているのです。
 そんなとき先ほどの山田さんを思いだして、「私は山田さんみたいに元気で困らず生きればいいや」と考えるのは自然です。医者がマナコを吊り上げ「コレステロールがすこ〜し高いんですから!あなたは健康ではなーい!」と叫んだとしても、「それはちょっと違うよ」っていいたくなるでしょう?
 それは医者が主張する状況と私達の感じる現実にギャップがあるからです。


●非現実的な目標はなせいけないのか

「治すという非現実的な目標」を持つことはどうしてよくないのでしょう?
 一言でいえば、「それでは元気がでない」からです。医療を提供する方も、医療を受けるほうも達成できないとわかっている目標に向かってもがき続けるのはつらすぎます。
 せめて一生懸命がんばれば何とか達成できる目標であれば、がんばる気力がでてくるし、かなり多くの人が目標を達成して満足することだってあるはずです。


●「やまい」の対義語は「日常」

 こんどは膝が悪い76歳の女性鈴木さんに登場していただきましょう。

 鈴木さんは歩くとき少し膝をひきづりますが、「これもトシだから仕方ないわ」と状況を受け入れ、彼女なりに日常生活を楽しんでいます。

 鈴木さんは彼女の「日常」を生きることにより納得しているのです。その日常のなかで「自分らしさを発揮できる自由さ」を感じることができれば、疾病をもっていたとしても人は納得がいくのです。
 鈴木さんに向かって「あなたの関節炎がすっかり治ってなくなるといいですね」といえば「そんなこと無理にきまってるじゃないの!」といわれるでしょう。
 でも「関節炎があってもあなたが日常を鈴木さんらしく、より自由を感じるように生活できるといいですね!」というと「そうですね・・・そうなるかしら?」と彼女の目に希望がともる。


 こういうシーンを繰り返し経験してきた私は、やまいを乗り越えた向こうには健康があるのではなくて、日常がひろがっているのだと確信するようになったのです。

現代医学の忘れ物(院長の独り言)
このコーナーの名前の由来 暑いのの反対は寒い、高いの反対は低い、では「病気」の反対は?
患者様の訴えはすべて信じよう 先生、この病気は一生治らないのですか?
本当のことを口にすると世の中は凍りつく 医者に治せない病気ほど医者が必要

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