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(院長の独り言)

 信愛クリニックは、患者様の立場に立って、理念に基づく開かれた医療を実践します

◇先生この病気は一生治らないのですか?

●「一生治らない」などという根拠はどこにもない

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 患者様はよく「先生この病気は一生治らないのですか?」と尋ねます。そんなとき私はいつも「そんなこと根拠はどこにもありませんよ!」と断言します。


 患者様が「一生治らないのですか?」と尋ねるとき、それは「検査上の異常所見がずっと残るのですか?」ときいているのではなく、「私が今感じているこのつらさ、苦しみは軽減することなくずっと続くのですか?」と問うていると理解するからです。


 医学が進歩すれば新しい治療がみつかり、これまで解決できなかった問題が解決できるようになるかもしれません。そうならない、といえる根拠はありません。


●検査の結果と苦しみとは一致するとはかぎらない

 もっと大事なことは検査所見の異常と苦しみとは必ずしも一致しない、ということです。検査所見と症状が一致しやすそうな整形外科領域で考えてみましょう。


 例えば腰痛を訴えてきた患者様にMRIをとったら椎間板が少し飛び出ていた。これを腰痛の原因と考えれば納得はいきますが、そのまま手術しなくても腰痛がよくなってしまうことが多いのも事実なのです。


 あの飛び出ていた椎間板はどうなってしまったのでしょうか?
きっとまだ変わらず飛びでているのでしょう。そして何よりも、MRIで少し椎間板が飛び出ているのに全く症状がなく経過している方が多くいるという事実、その一方でMRIは全く正常でありながら激しい腰痛に悩む方も大変多いという事実から何が見えてくるのでしょう?


 MRI所見と腰痛は関係が無い!?それは少しいい過ぎかも、せめて「関連はあるけど強固な一対一対応の因果関係があるわけではない」といえば正確だと思います。


●「今よりも良い状態」は常にありうる

 症状には様々な原因が関わっています。家庭で妻との関係が険悪になれば、症状が一層つらく感じられるものです。逆に、何かすごくいいことがあって気分が高揚したとき、これまでのつらさが嘘のようになくなっていることもよくある。

 つまり患者様が症状として感じている感覚には私達には把握しきれないほどの様々な要素が関わっているのです。だから構造上の異常が残っていても他の症状に影響を及ぼしていた要素が改善すれば症状は軽減するか消えてしまうことだって十分にあり得る、ということなのです。


 少なくとも医者にはその患者様の症状が「一生よくならない」などという能力が無いことは確かです。


●愚痴をいわせてもらえば…

 それにも関わらず「○○病院の△先生に、あなたは一生治らないよ!っていわれました…」と深く傷ついて私の前に現れる患者様が多いのはどうしたことか。医者にそんなことをいう能力が無いだけではない、救いと希望を求めて医療を尋ねてきた患者様の希望を断ち切るようなことをなぜ口にするのか、おそらく患者様の病気を治すことができぬ無力感にいらだち、本来自分の無力さに向けるべきそのいらだちを患者様に投影させた結果患者様の存在自体にいらだって無意識あるいは意識的に患者様に対して攻撃性を発露してしまったのだろうか・・・ヒトの悪口はいけませんね生産的でないからこれでやめましょう。

●「一生」なんていってはいけない

 とにかく「一生」などという言葉は医療において使うのは不適切だということです。何月何日かはわからないけど、あなたが直面している問題が今より改善する可能性は、ある。どれくらいかの可能性かはわからないけど、無いという根拠が無いことだけは確かなのです。

現代医学の忘れ物(院長の独り言)
このコーナーの名前の由来 暑いのの反対は寒い、高いの反対は低い、では「病気」の反対は?
患者様の訴えはすべて信じよう 先生、この病気は一生治らないのですか?
本当のことを口にすると世の中は凍りつく 医者に治せない病気ほど医者が必要

以下の「院長の独り言」は医療の専門家向けですが興味のある方はどうぞ
EBMの意義 なぜEBMについて考えるのか?
EBMが普及しないわけ

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