なぜHuman willが必要なのか

アフリカや中近東の国々をはじめ、世界の国の中には、戦争や内戦などによって、人が生存することも困難な社会も少なくありません。それに対して今の日本社会は、平和と安全は当然のように前提条件となっていて、私達の周りには食べ物があふれ、えり好みしなければ仕事もあって、ただ生存することに関していえば、社会的な問題はほとんどないといって良いでしょう。

一方で、厚生労働省が実施している患者調査によれば、日本のうつ病の患者数は1996年には43.3万人、1999年には44.1万人とほぼ横ばいでしたが、2002年には71.1万人、2005年には92.4万人、2008年には104.1万人、2014年には114万人と著しい増加を続けています。

厚生労働省の最新のデータによると、一生のうちに、うつ病にかかる日本人は約7%、海外のデータでは14%くらいといわれています。
うつ病になる人の率は若い人ほど多いとされ、今後さらに増加することが予想されています。この傾向は海外でも同様であり、WHO(世界保健機構)の調査では、先進国においては全ての病気の中で罹患する人が一番多い病気がうつ病になるであろうとしています。

これらの統計からも、現代社会において、より多くの人々がメンタルコンディションを崩し易くなっていることは間違いなく、それは私が日々の診療において得ている実感とも一致します。

このような社会の現実に対して、医療従事者である私達に何ができるのでしょうか。
より大量に抗うつ薬を処方することである、という方針が正気の沙汰ではないことくらい、人間としての正常な感性をもってすればわかるでしょう。

私は内科の専門医でありながら、身体と心の両方を診る医療を独自に追求してきました。
開業時に精神科を標榜して以来、12年になります。

信愛クリニックにある7万人以上のカルテの内訳は、純粋な内科の患者さんが2万人ほどです。メンタルの不調を訴えて来院した患者さんは2万人弱であり、身体の不調を訴えて来院したものの、メンタルの不調が原因と判明し精神科的な治療を行った患者さんが3万人ほどです。計5万人近い精神科的治療の経験を通じて、精神科で用いる薬の威力を私は知り尽くしています。

しかし同時に、人間の心が薬だけではどうにもならないことを痛感し続けてもきました。
真に人の心を回復させるために何が必要なのか、私は模索を重ねました。

認知行動療法、スキーマ療法、対人関係療法、精神分析療法・・・どれも一定の効果はあるにしても、人間の心の本質に触れられたという感覚は得られませんでした。
いずれの治療法も表面的かつ手法的であり、人の心の深淵さを解き明かすものではありません。
そもそも医者として人の心を診るにあたり、人間の精神性を無視しては、現実のごく一部のみしかみえないと私は思うのです。

これまで臨床医として数え切れないほどの人の死の瞬間に立ち会ってきた私は、生きている人に宿っている魂としか呼び様のないエネルギーが、死の瞬間に人から離れてゆくことを体感として感じてきました。
何ら特定の宗教に属さず信仰とも無縁の私ですが、人間を超越した大いなる意識と意志が存在するのは当然のことに感じられます。そんな私にとって、人間の魂の存在を無視して心の説明をされても、真実とは遠いものにしか思えないのです。

私は人間の心と魂の問題について二十年以上探求し続けました。心理学や精神医学、精神世界の本を1000冊以上読み漁り、幾つもの自己啓発セミナーに通いつめても、ついぞこれだ!というものに出逢えませんでした。ひとつひとつを詳細に学ぶほど、言葉の定義やアプローチに矛盾や違和感を感じてしまうのです。
そんな私が、伊藤先生と出逢ったことにより大きな転機を迎えたのは、5年近く前のことになります。伊藤先生が示す世界観は、圧倒的なリアリティと真実味を放っていました。私はようやく求めていた難題に明確に答えてくれる師に出逢ったのでした。

伊藤先生に師事した私は、厳しい指導の下、自分自身の課題と向き合ってきた結果、自分の進むべき方向性を確信するに至りました。
そして2016年の1月にHuman will companyが設立され、伊藤先生の指導にもとづいてHuman will projectを発足しました。

人の心が本来の在り方を取り戻すために、私達は何を知り、何を意識して、どう行動すれば良いのでしょうか。
Human will projectは、己を表現することと、人と人が信頼関係や愛情関係を築いてゆくためのコミュニケーションこそが、その答えであるとします。

人が自分らしく生きるには何を変えたら良いのか、大切な人達と心を通わせるにはどうすれば良いのか、本当に人を愛するとは、どのようなことなのか、こういったことこそが、人が生きてゆく上で最も重要であることを、Human will projectは伝えてゆきます。

このHuman will projectの実現が、心の問題に苦しんでいる多くの人にとっての、確かな道筋になることを願っています。