精神医療とチームの力

いつのまにか日が暮れるのが早くなりましたね。秋の訪れを感じます。
暑さから解放されて、皆さまも動きやすさを感じているのではないでしょうか。

今回は精神医療におけるチームの力について、お話しましょう。

精神医療といえば、密室で患者さんと医師が向き合うイメージが一般的かもしれません。
ですが、信愛クリニックで精神医療を実践して思うことは、心の問題の核心に取り組む医療には、チームの力が欠かせないということです。

まず心の問題の核心とは何でしょうか。
これまでも繰り返し伝えてきたように、ほとんど全ての患者さんにおいて、心の悩みや苦しみの背後には、歪んだ自己認識があります。自分自身に自信と確信が持てず、自分を否定的にしか捉えられないために、うつや不安、その他さまざまな症状が現れるのです。
そして心の問題の根源をたどってゆくと、親との関係に行き着きます。
では親は何故そんな風だったのかといえば、それは親のそのまた親との関係に由来します。
そう考えると、心の悩みの因果関係は、もはや時空を超えた拡がりを見せます。

かくも大きな問題を、未熟な私が独りで、それも限られた診察時間の中で解決することは出来ません。だからこそ、問題解決にはカウンセリングの併用が必須です。しかしカウンセラーも、月に1回か2回のセッションで、全ての問題を解決することは難しいでしょう。
そこで医師とカウンセラーが役割を分担し連携することによって、治療効果が高まることを私は実感しています。

さらに信愛クリニックの精神医療の現場では、看護師も重要な役割を担っています。
例えば診察の待ち時間の間に、看護師が患者さんの話を聴いてカルテに記録をすることで、医師やカウンセラーがより詳しく状況を把握できます。あるいは、診察時の様子が気になった患者さんに、看護師が後日電話連絡をして様子を確かめることもあります。こうすることで患者さんが診察から脱落することを防ぐだけでなく、クリニックと患者さんの信頼関係を積み上げることができます。

このような関わりは看護師に限らず、採血をするときの検査技師の対応や、受付・会計を担当する事務職員の心のこもった温かい笑顔にも、患者さんの心にエネルギーを届ける力があると私は信じています。

では医療がチーム力を発揮するために、大切なことは何でしょうか。
最も大切な条件は、医療チームの人間関係が良好であることだと私は思います。
医療従事者も、様々な問題をもつ不完全な人間であることに変わりはありません。そんな私達は、お互いに弱みや欠点すらも受け入れあい、足りない部分を補い合い支えあってこそ、患者さんの心に届く医療が提供できるのです。

看護カウンセラー養成コースの卒業生が、医療の現場で人間関係の問題を解決し、それによってより良い医療が患者さんに提供される日を私は心待ちにしています。

毎月1回行っている、「看護師のための心の看かた勉強会」は毎回盛況です。さらに学びを続けたい看護師はナース倶楽部に入会し、「おなすの会」も定期的に開かれて、確実な成果が積み上げられています。

あと少し、もう少しで、また一歩、究極の精神医療の実現に近づける、私は自分にそう言い聞かせながら前進を続けています。

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