米国出張 ‐ 後編 ‐

あっという間に年末になりました。
冬の気配も濃くなるなか、皆さんはいかがお過ごしでしょうか。

今回は、私が9月に米国を訪れて、私にPIPC(内科医が心を診るための方法)を教えたRobert K Schneider先生と会ってきた話をします。Robertを米国ではBobと呼び、目上の師匠もファーストネームで呼び合う米国の慣習に従い、敬意を込めてSchneider先生を以下にBobと呼ばせていただきます。

まずは本気Blogの第3回目、「私の人生を変えたPIPC Bobとの出会い」を、お読みください。

今回、私が渡米を思い立ったきっかけは、Bobとのやりとりからでした。

私は今年6月のある日、ふとBobに「ご無沙汰していますが、元気ですか?」とメールしたところ、Bobから「実は最近、医者を辞めました」と返事が返ってきました。

まだ60歳のBobが、医師として引退するには早すぎると思ったので、私は驚きました。
Bobは、Bob自身が苦しみながら医療に携わり58歳で医師を辞めて、現在は自宅で家具を作って生活していることをメールで伝えてくれました。

それを聞いて私はどうしてもBobに会いたくなり、バージニア州リッチモンドにある彼の自宅を訪れることにしたのです。せっかく渡米するならば、とニューヨークに立ち寄り、ヒラリーと花川さんと面会したことは、前の記事でお伝えしました。

郊外の閑静な住宅街にあり湖に面するBobの家は、とても素敵でした。
奥様のDebraと、2匹の犬Rex&Daphneとが暮らすBobの自宅に、3泊も泊めてもらいました。その間ずっとBobと一緒にいて、森に囲まれた部屋で語り合い、ジムに行きトレーニングし、自宅の地下にある大きな工房でナイフを作ったりして、お互いが楽しみました。知性と、その奥に熱いハートを感じさせるBobと、深い話を存分にする時間がもてました。

患者さんを人として扱い、心と身体を同時に診るためにPIPCを創ったBobは次のように語りました。

「Hiro,米国の医学界では、『心と身体は別ではない』などというと変わり者扱いされるんだよ。そして本気で『患者さんの為に』などと言う医師もまた米国では異端なんだ」

このブログを読んでいるあなたは、Bobの言葉に驚くかもしれません。Bobが語る米国医療の実態に、私も驚いてしまいました。
しかし考えてみると、日本でも状況は同じです。
つまり、日本の医療界でも心と身体は全く別のものとして扱うのが普通ですし、『患者さんの為に』と熱く語っていると、「何を青臭いことを言っているんだ」という空気になりがちです。もちろん総論として『患者さんのため』に反対する人はいなくても、例えば病院で入院中の患者さんが急に具合が悪くなり、深夜にもかかわらず必要な検査を依頼したときに、

病院職員「夜だから出来ません」
医師  「いや、でも患者さんのことを考えたら、今検査しないとダメでしょ!?」
病院職員「そんなこといったって、もう夜勤帯ですから」

というような会話は、医療現場にいる人であれば想像がつくはずです。

では、米国の医師は何のために医療をするのかというと、「金のため」が多いそうです。
年収の多い人が成功者とみなされがちな米国社会において、稼げる職業ランキングの上位に医師が入っています。高名な専門医ともなると、年収が1億を越えることもあり、巨額の奨学金を借りて医学部に入学した学生が、金を稼いでこそ医師になった意味があると考える社会背景があるのです。

そしてBobは、米国の医学研究が製薬会社に牛耳られていることを語りました。
それもそのはずです。主だった米国の製薬会社が2017年の1年間で使った研究開発費は10兆円を軽く超えています。そのように開発されて最近日本でも発売された新薬の中には、1錠8万円もする薬や、1回で90万円以上する点滴が何種類もある現状からすると、医療と金の関係は切っても切れないといえるでしょう。

そんな米国医療の真っただ中で、『患者さんの心と身体を同時に診て、患者さんの為に医療をする』という信念に基づき、医師として働き続けたBobは消耗してしまったのです。

私が心療内科の診かたについての本を執筆していることを、Bobはとても喜んで、私を励ましてくれました。私の肩の上にのって前に進んでいって欲しい、と言ったBobの顔が忘れられません。
奥さんのDebraが目に涙を浮かべて、
「Hiro、あなたが今回来てくれて、こうして話が出来たことがBobにとって、どれほど重要なことだったかわかる?」
と言ってくれたことが心に残っています。

3日間にわたって朝から夜まで行動を共にしながら、Bobと深く語り合った時間を経て、私は自分が内科医の立場から本格的な精神医療に踏み込んでいった原点を感じることが出来ました。
そしてBobと出会えたことへの感謝の想いが込み上げてきて、Bobを師として精神医療を始められたことを一層誇りに思いました。

Bobとの出会いがあったからこそ、後に伊藤先生と出会い、心についての学びを深めて、Human willの道を見出すことが出来たのだと、自分の軌跡を振り返る機会となった旅でした。

今回の米国出張を通じて、人が自分らしく生きられるようになるために、大切な人達と心を通わせられるようになるために、真の医療を追求しながらHuman will projectを突き進めていくことに、気持ちを新たにしています。

 

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