なぜ訪看ステーションは潰れるのか

桜が散り、年度も変わって、新しい出発を感じさせる4月になりました。
皆様はいかがお過ごしですか?

Human willでは「看護師のための心の看かた勉強会」開催のお知らせを、毎月発送しているのですが、訪問看護ステーション宛に送ったチラシが「宛先人不明」で返送されてくることが、よくあります。

一体何が起きているのだろう? もしかして訪看ステーションが潰れてしまったのだろうか? と思った私は、日本看護協会の統計を調べてみました。

それによると、平成29年の1年間に新たに開設された訪問看護ステーションは全国で1221ステーションありますが、同年に活動を止めたステーションは、710ステーションもあります。さらに平成29年に開業しながら1年以内に潰れたステーションが、34ステーションもありました。
こんなに大量の訪看ステーションが潰れている理由は、一体何でしょうか?

その理由を知るために、私は「看護師のための心の看かた勉強会」に参加した訪問看護師や、訪看ステーションに勤務経験がある看護師に、訪看ステーションの困りごとについてインタビューをしました。

その結果見えてきた原因は3つありました。

1つめは、訪問看護師の人員不足です。
夜間や休日に利用者さんからの緊急連絡を受け、出動体制をとるオンコール負担に対して、現在の制度では充分な報酬が得られません。その結果、オンコールを引き受けたナースは自己犠牲を強いられます。しかも主治医となかなか連絡がとれず、必要な指示がすぐにもらえないストレスが大きいのです。
信愛クリニックでは、オンコールを全て私がとることで看護師の負担を減らしています。さらに医師の訪問診療には看護師が同行し、日常業務の中でコミュニケーションを重ねることで、彼女達がより自由に動けるようにしています。

利用者さんとじっくり関われる現場を求める看護師にとって、訪問看護がおいしい仕事とはいえない現状は残念でなりません。

2つめは、人間関係の問題があります。
たとえばステーション管理者が看護師の場合は、メンバーと信頼関係を築き、同じ看護観を持って共に働きたいという気持ちが強いはずです。しかし、それが押し付けになってしまうとメンバーは強いフラストレーションを感じるでしょう。
あるいは、メンバー同士の人間関係がこじれた時におさめることができず、看護師が退職することもあるはずです。個人が開設する小さなステーションでは、看護師の欠員に補充が効かないと、潰れてしまいます。

「心の看かた勉強会」で出会う訪問看護師達は、もっと利用者さんの為に何かしてあげたい、という強い想いを持っています。その一方で、さまざまな人間関係の問題に直面し悩んでいます。そんな彼女たち自身が、人間関係の問題を解決する力をつけていくことが、ひいては彼女たちの想いを成就させることにつながると私は確信しています。

表面的なスキルを用いても、相手の気持ちがわかるようにはならないし、信頼関係を積み上げるには至りません。人間関係の問題を解決する力をつけるには、まずは身近な問題を取り上げて、自分自身の気持ちと向き合うことからはじまります。その学びを体験できる場として「看護師のための心の看かた勉強会」を毎月開催できていることは、私の誇りです。

そして3つめの原因は、訪看ステーション経営をする看護師やメンバーが、ビジネスとしての経営に馴染みがないことがあります。

たとえば、病棟勤務をしていた時には、ケアをすべき患者さんが目の前にいることが当然であったのが、訪看ステーションを開設したら、いわゆる営業をかけなくては利用者さんはやってきません。ケアマネージャーや地域の関係者とコミュニケーションをはかって、信頼関係をつくり、利用者さんと出会う必要があるのです。
また、医療現場を知らない人が管理者をするステーションの場合は、コスト管理を厳しく言われるかもしれませんが、様々なコストがかかる看取りの現場でそれを言われると、「会社の利益のためにやっているんじゃない!」という気持ちになる看護師もいるでしょう。

ですが、やはり利益を出さなくては組織運営は成り立ちません。これまで私は、医師に対しては経営を教える活動を7年以上続けてきました。今では20名近くいる信愛クリニックの勤務医はもちろんのこと、プライマリ・ケア学会や大学の医学部において、医師に経営を教えるようになり、いつも好評を博しています。
私は、看護師達が経営について学ぶ場も、いつか提供したいと思っています。

テクノロジーに圧倒されがちな病院での医療と異なり、患者さんの自宅を訪れる訪問医療は、人が人を看る医療の本質が現れる現場です。そこに臨む看護師達の志が、くじかれることなく実ってゆく社会の実現にむけて、Human willは今後も進み続けます。

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