アスペルガー症候群とは、知的障害を伴っていないもののコミュニケーション能力に、
やや特異性が認められる症状です。
言語能力、会話能力そのものに関しては問題ないものの、
他者とのコミュニケーション、ひいては社会的関係等において障害が確認されるもので、
近年は自閉症スペクトラムに含まれる障害に分類されています。
しかし、言語能力、会話能力には何ら問題がない点が発見の遅れにつながっています。
外見はもちろんですが、軽いコミュニケーション程度ではアスペルガー症候群だと判断することは難しいです。
そのため、何ら問題ないと思っていたものの、実はアスペルガー症候群だったというケースもあります。
アスペルガー症候群の原因は分かっていません。
遺伝的・先天的要因にあるのではと考えられている一方で、
胎児から成長する段階において、
環境要因等が脳に影響を及ぼすことでアスペルガー症候群となるのではないかとの説もあります。
また、胎内環境、周産期のトラブルが影響しているのではとの説もあるなど、
原因が特定されていないことで、様々な説が考えられています。
近年の研究によると、アスペルガー症候群はおよそ100人に1人とされています。
特に男性の方が多い傾向にあり、女性の4倍とされています。
しかし、女性の社会進出の状況等を鑑みると、女性ももう少し多いのではとも囁かれています。
アスペルガー症候群の患者は、およそ70%以上の人が1つ、
40%以上の人で2つ以上の精神疾患を持っているとされています。
知的障害やADHD、発達性協調運動症や学習障害が併存しているとされています。
また、医学的併存疾患として睡眠障害や便秘、てんかんを合併しやすいとされています。
アスペルガー症候群の症状として、大きく3つに分類できます。
アスペルガー症候群は、人間関係においてトラブルを起こす可能性があります。
アスペルガー症候群になると、相手の気持ちを想像したり、
いわゆる「空気を読む」ことが不得意になります。
つまり、暗黙の了解が分かりませんので、本来であればわざわざ説明する必要のないことも、
アスペルガー症候群の場合、それらが分かりません。
気を使ったり忖度したりが苦手なので、
その場の雰囲気を壊すような言動や周囲が敢えて遠慮している発言をしてしまい、
顰蹙を買うこともあります。
アスペルガー症候群になると、他人とのコミュニケーションが難しくなる場合があります。
ネットやテレビ等で覚えた難解な言い回しを好んで使用するので、
周囲が発言の真意を理解できない点に加え、
いわゆる間接的な表現や比喩・皮肉を文字通り受け取ってしまう傾向にあります。
間接的な表現、あるいは文脈・行間を読むことが苦手なので、
相手の真意を理解できなかったり、ユーモアやお世辞・社交辞令も真に受けてしまうこともあります。
また、耳からの情報処理が不得手であることから、会話の内容についていけなくなることもあります。
決められた手順へのこだわりが強い点もアスペルガー症候群の特徴です。
そのため、新しい人や環境、予想外の状況への対応が苦手で、
予想外の出来事に遭遇するとパニックを起こすケースもあります。
また、特定の細かい部分にのみこだわり、全体像を見ないケースもあれば、
対人関係が困難だと感じると、他人とのコミュニケーションを避けるようになり、
自分だけの世界に没頭してしまうケースも見受けられます。
アスペルガー症候群の診断は世界保健機構が作成した「ICD-10」、
アメリカ精神医学会が作成した「DSM-5」が基準となっていますが、
近年はDSM-5が用いられるケースが多いです。
ICD-10やDSM-5をベースに、既往歴や症状等の問診、さらには心理検査を行い、
アスペルガー症候群かを診断します。
また、アスペルガー症候群だけではなく、
他の精神疾患が疑われるケースもありますので、
アスペルガー症候群だけを想定するのではなく、
様々な症状を想定した検査を行うケースが多いです。
現代医学では、アスペルガー症候群の根本的な原因の治療は不可能とされています。
特にアスペルガー症候群の患者は、
それぞれ独特の考え方や特性を持っていますので、
一人一人の状態を踏まえた治療が求められます。
投薬治療にて症状が軽減する場合も見られるのですが、
投薬だけに頼るのではなく、
個々の状態に合わせた環境の構築やアスペルガー症候群への理解が求められます。
また、基本的に長期的な治療が求められます。
短期間で急激に変わるものではなく、時間をかけて理解を深めるものです。
焦って短期間で結果をと考えると、患者にとっては負担・ストレスとなり、
アスペルガー症候群を悪化させてしまう可能性もあります。