大腸の内側に慢性的な炎症が生じ、
「びらん」や「潰瘍」といった病変が起きる病気です。
びらんとはただれている状態で、粘膜に傷はありますが、粘膜下層にまでは傷が達していません。
潰瘍とはえぐれた状態で、粘膜の下の壁まで傷ついてしまっています。
原因はまだ不明で、根治できる治療法はなく、厚生労働省から難病に指定されています。
ただし、適切な治療で病状をコントロールすることで、健康な人とほとんど変わらない生活を送ることが可能です。
性別や年齢を問わず発症する可能性がある病気です。
発症年齢のピークは男性で20~24歳、女性では25~29歳です。
2022年現在で24万人を越えると推定され、決して稀な病気ではありません。
重症患者は少なく、90%が軽度から中度の症状ですが、発症して7~8年ほど経過すると、大腸がんを併発するケースもあります。
そのため、症状が落ち着いていても定期的な内視鏡検査が大切になってきます。
潰瘍性大腸炎についてはっきりとした発症の原因は現在のところ解明されていません。
あらゆる可能性が挙げられており、代表的なものは3つです。
1つめは、腸内細菌の働きによるという説。
2つめは、外敵から身を守るはずの免疫反応がなにかしらの異常で粘膜を攻撃してしまうという説。
3つめは、食生活の変化や乱れによる腸内環境の悪化などが関係しているという説。
また、同じ家系内に発症者がいるケースも多く認められています。
そのため、なんらかの遺伝子的要因があるのではないかという指摘もされています。
現段階では、潰瘍性大腸炎は1つの原因によって引き起こされるのではなく、
遺伝や食生活、免疫の異常など複数の要因が重なり合い、発症すると考えられています。
特徴的な症状は、頻繁に起こる腹痛や激しい下痢、柔らかい便に血液が混ざるなどです。
便意をもよおす回数も増えます。
重症の場合は、発熱や頻脈(脈が速くなる不整脈)、息切れやめまい、動悸、
ほか長期間血便が出ることによる貧血など、全身にさまざまな症状が引き起こされます。
また、栄養の摂取が難しくなることから体重が減少するケースもあります。
潰瘍性大腸炎は大腸以外の部位に大きな症状を引き起こすことは少ないとされています。
しかし、なかには腸管以外の合併症として、発疹など皮膚の症状、
関節や眼の炎症などの症状があらわれる人もいます。
潰瘍性大腸炎の症状の現れ方は人それぞれです。
上記のような症状が良くなったり悪くなったりを繰り返すパターンもあれば、
症状がずっと続くパターン、そして急激に強い症状が現れるパターンなどもあります。
例えば、大量出血や急に大腸の壁に穴が開くなど命に関わるような症状を引き起こすこともあります。
患者様に症状などを問診するところからはじまります。
下痢の回数・便の状態・血便の頻度・腹痛の程度・発熱・その他の症状などについて、確認していきます。
潰瘍性大腸炎が疑われた場合、より詳しい検査を進めていくことになります。
その際に重要なことは、起こっている症状が、他の病気が原因ではないかを確認をすることです。
血液検査を使用し、炎症の状態や貧血が起こっていないか、体の栄養状態や、
薬剤などによる副作用がないかなどその他の全身状態などを調べます。
そして、便検査を使用し、感染性腸炎など、他の疾患によって炎症が起きていないかを確認します。
その後重要になるのが、大腸内視鏡検査です。
大腸粘膜の一部を採取して、採取した組織の一部を顕微鏡などでより詳しく調べる病理検査を行い、
類似するほかの大腸の疾患と見分けて、診断を確定させます。
さらに、X線やCTなどによる画像検査も行うことで、
大腸のどの範囲までどの程度の炎症が起こっているのか等を調べることもあります。
内視鏡検査は診断時だけではなく、診断が確定したあとでも行います。
内視鏡検査を定期的に行う理由は、炎症の拡がりや程度を確認して治療に反映させると共に、
大腸癌の発生を監視することも大切です。
内科的治療と外科的治療があります。
治療の主体となるのは、内科的治療で、大腸に生じた炎症を鎮めたり、
過剰に作用する免疫の働きを抑制する薬によって、
症状をコントロールしたりする薬物療法を行います。
それぞれの症状がどれくらい緩和されているのかや、
副作用の有無などを注意深く観察しながら治療は慎重にすすめられます。
しかし、以下のような場合は、外科的治療で、大腸を摘出する手術を行うこともあります。
・薬物療法で十分な効果が得られない場合
・副作用が強く薬物療法が続けられない場合
・大腸からの大量出血や大腸に穴が開いてしまった場合
・大腸がん併発の疑いがある場合など
潰瘍性大腸炎には、「活動期」と「寛解期」があります。
活動期は、炎症が起こって症状が強く出ている時期で、
下痢や腹痛などの症状を軽減させつつ、寛解を目指す治療が行われます。
寛解期は症状が治まっている時期で、健康な方とあまり変わらない生活を送ることができます。
薬の服用など治療をきちんと続ければ、多くの場合は寛解を維持することができます。
また、食事療法そのものが腸の炎症を改善させるという科学的な根拠はありませんが、
食事を意識するということは重要なことです。
患者様の体質によっては、特定の食事が下痢や腹痛などを引き起こすことがあります。
そのため、症状の悪化を防ぐためには、体質に合わない食べ物を避けることは大切です。