不眠症は以下の2つの基準が患者の症状として確認できたときに診断されます。
・寝床に身体を横たえても眠れずに、寝つきの悪い状態である
「入眠障害」や、夜中に途中で目を覚ましてしまい、
眠りを維持できない「中途覚醒」、朝早く目覚めてしまい、
その後眠れない「早朝覚醒」といった睡眠に関する問題が1か月以上続く。
・よく眠れないために日中の眠気を感じたり、注意力が散漫になったり、
疲れて意欲や集中力の低下がみられたり、食欲が無くなったりなど、
さまざまな体調不良や精神の不調が起こり、生活の質が低下している。
多くの人が、心配事がある時などは「
眠ろうとしてもどうしても眠れない」という不眠体験があるかと思います。
しかし、通常は数日から数週のうちに、また眠れるようになります。
不眠の症状が1か月以上継続して続き、
身体や心が疲弊している場合は、不眠症の可能性があります。
日本人の5人に1人がなんらかの睡眠問題を抱えているといわれます。
特に60歳以上では約3人に1人に及ぶというデータもあるほどです。
睡眠障害・不眠症は国民病といわれています。
特殊な病気ではなく、よくある普通の病気です。
不眠の原因は様々です。
時差がある場所に引っ越した/
枕が変わった/
暑さなどの温度や湿度/騒音/まぶしい光など明るさ/
異動や入学・転職などの環境の変化など
加齢など年齢によるもの/腎臓病や前立腺肥大などによる頻尿/
高血圧や心臓病の胸苦しさ/呼吸器疾患の咳や発作/
関節リウマチの痛み/アレルギー性疾患のかゆみ/
ホルモンバランスの変化/更年期障害など
人間関係の悩み/イライラすることがある/極度の緊張/
精神的ストレス/睡眠状態に対するこだわりなど
アルコール/喫煙/カフェインの摂取過多/薬の副作用/
運動不足/寝る直前のスマートフォン/生活リズムの乱れなど
不眠症は大きく4つのタイプに分けられます。
床についても1~2時間以上眠りにつけない状態です。
眠ってしまえば朝までしっかり眠れます。
ひとまず眠りにつけても、眠りが浅い状態で、
起床するまでの間、夜中に何度も目が覚めて、
熟睡感が得られにくい傾向があります。
すぐには寝られるものの、
起床を予定している時刻の2時間以上前に目が覚めてしまい、
その後眠れなくなってしまう状態です。
眠りが浅く、熟睡できません。
ある程度眠ったとしても、
睡眠時間のわりにはぐっすり眠れて満足したという感じや
休んだという感じが得られない状態です。
これらが毎日のように続くと、翌日への悪影響がより出るようになります。
これらの症状は同時に複数現れることもあります。
また、睡眠時間の長さは個人差があるため、長さは問題ではありません。
眠りが短くとも、昼間の生活に支障がなければ不眠症とは診断されません。
不眠症は不眠そのものだけではなく、日中に不調が現れることが問題です。
日本人の睡眠時間は平均して7時間程度といわれます。
しかし、3時間ほどの睡眠で十分だという人もいれば、
10時間ほど眠らないと寝足りない人もいます。
また、加齢とともに睡眠時間の長さは短くなっていく傾向にあります。
「若い頃はもっと眠れたのに」と比較をすることはやめましょう。
診察時に患者への問診と、睡眠の記録などを確認し判断します。
身体疾患や精神疾患があるのかどうか、
服用している薬があるのかどうか、飲酒や喫煙などの生活習慣について、
仕事について、就寝と起床の時間など睡眠週間の記録などを確認します。
また、客観的な睡眠の質を確認する必要がある場合は、
睡眠ポリグラフ検査が行われることもあります。
睡眠ポリグラフ検査とは、脳波・眼球運動・心電図・筋電図・
呼吸曲線・いびき・動脈血酸素飽和度などを、一晩にわたって測定する検査です。
不眠症になってしまっている原因によってアプローチの仕方は大きく変わります。
不眠症が他の病気が原因ではないならば、
睡眠に関する正しい知識を共有し、生活リズムや生活習慣の課題を確認します。
私たちには体内時計が備わっています。
その時計に合わせるように、
毎日の起床時間や就寝時間を一定にして生活リズムを整えていきます。
・朝起きたら朝日を浴びる
・日中は適度に運動をして、活動的に過ごす
・寝る前のカフェインや喫煙、アルコールは控える
・遅くまでスマートフォンなどを使わない
・就寝する部屋を快適な温度・湿度で保つ
・照明も可能な範囲で暗くする
などの生活習慣を意識してもらいます。
生活習慣の改善を意識して行っても眠れない場合、
睡眠を整えるための薬物療法を検討します。
不眠症の症状を自覚したり、人から指摘されたりして、
日常生活に支障をきたしている場合は睡眠の専門家を受診しましょう。
不眠症は精神科や心療内科で扱います。
もし、精神科や心療内科へ行くことにハードルが高いと感じる人は、
まずかかりつけ医に相談してみましょう。
不眠について医師に相談するだけでも不眠に対する恐怖が和らぐことがあります。
眠れないことを一人で考え込まないことはとても大切です。
その心配する気持ちそのものが、
不眠を悪化させるだけではなく、心や身体に悪影響を与えます。