米国出張 ‐ 前編 ‐

秋が深まってきましたが、皆さまいかがお過ごしでしょうか?

私は9月の最終週に7日間、信愛クリニックを離れて、米国にいってきました。
いわゆる観光はせずに、ひたすら人に会って話をしてきました。
私が会いにいった人とは、Hilary Yacobs Hendel、花川ゆう子さん、Robert K Schneiderの3人です。今回は、Hilaryと花川さんに会った話をしましょう。

Hilaryとの出会いは、一冊の本から始まりました。
私は、重度の摂食障害の患者さんや、トラウマに苦しむ患者さんを前にして、どうすればもっと成果がでるのかを模索していました。心の問題への取り組みをカウンセラーに託すことは大切ですが、主治医としても、より効果的な関わりを持ちたいのです。

そんな気持ちで精神療法に関する本をAmazonで漁っていたところ、ふと『It is not always Depression(「それは鬱ではないかも?」井出訳)』という英語の本に出会いました。
AEDP(加速化体験力動精神療法)という心理療法のセラピストであるHilaryが書いたその本を何気なく読み始めた私は、あっという間に引き込まれました。なぜかというと、その本に示されていたAEDPという療法はHuman willのカウンセリングに通ずる手法だったからです。

具体的には、まずAEDPのセラピストは、クライアントが安心できる関係性をつくることに注力します。その上で、クライアントの状態にチューニングを合わせ、クライアントが発する情報を言語的だけでなく非言語的にも読み取りながら、クライアントが独りでは向き合えなかった感情に、向き合えるようになることを支え続けます。クライアントが抑圧してきた感情を、身体感覚をともなって再体験することで、クライアントに癒しと成長を引き起こしてゆくメソッドです。

この本で紹介されている『Change triangle』というツールを使うことで、私は患者さんにカウンセリングの必要性をより明確に伝えることが出来るようになりました。さらに信愛に勤務する医師に対しても、なぜカウンセリングが大切なのかを、短時間で深く伝えることができるようになったのです。

AEDPは、私が知る既存の心理療法の中では、一番しっくりくる感覚があります。人のつながりを大切にするAEDPの方向性は、私が目指す医療改革とも矛盾しません。
これは、とても大切な出会いだと直感した私は、本の著者であるHilaryにメールを送りました。それをきっかけにHilaryとのやりとりが続き、日本人スタッフである花川さんの紹介も得たのでした。

私にPIPCのMAPSO問診を伝えてくれたRobert K Schneider先生(通称Bob)に会うため渡米することは先に決めていたので、ついでにニューヨークに立ち寄ってAEDPジャパンの創始者である花川ゆう子博士と、『It is not always Depression』の著者であるHilary Y. Hendel博士に会いにいくことにしました。

ニューヨークで会った花川さんは、とてもソフトで話しやすい人でした。花川さんは、ニューヨークの大学で心理学の博士をとるときに、AEDPの創始者であるDiana Forshaに出会い、プロカウンセラーとしてニューヨークで暮らしています。カウンセラーが星の数ほどいるといわれるニューヨークで、1時間250ドルのカウンセリングがいつも予約でぎっしりという花川さんは、一流の臨床家といえます。今後、AEDPジャパンの活動を、私は支援する気持ちがあることも伝えてきました。

Hilaryとも会って、一緒にランチをしました。
普段会う人達よりも、深い部分でわかりあえるような、不思議な感覚がありました。
予想していたよりもシャイな人でしたが、とても豊かな知性を感じさせる、深みのある人でした。伊藤先生のことやHuman will projectのことも話をし、あっという間に1時間以上が経っていました。
Hilaryは私に、彼女の本の翻訳をしてほしいといいました。

私は今、自分で『心療内科の診かた』という本を執筆中ではあるけれども、何とか取り組もうと思うと答えました。

これまでの記事でも述べてきた、精神医療における私の成長の軌跡を思い起こすと、独自に心療を学び始め、Robert K Schneider先生に出会ってPIPCを使うようになり、伊藤先生に出会って心とは何なのかを学びました。そして私は今、せいぜい15分しか確保できない保険医療の制約のなかで、医師がどこまで心の問題の核心に近づけるかに挑戦しています。その点において、Hilaryとの出会いが新たな境地を示してくれそうな感覚に、わくわくしています。

次回は、米国バージニア州リッチモンドに住むRobert K Schneider先生のお宅を訪問した話をします。

 

Hilarys

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