何らかの原因で腸がねじれてしまい、腸の通過障害と血行障害を起こす病気です。 大腸はある程度固定されているため、起こりにくいです。 しかし、S状結腸に起こる腸捻転は比較的起こりやすいです。 S状結腸は固定されておらず、ぶらぶらしています。 便秘で便がたまるとその重さで、腸間膜の根元を支点にしてくるりとねじれてしまうことがあります。 腸がねじれて血流が止まると、激しい腹部の痛みなどの虚血性の症状があらわれます。 重症のケースだと、血流障害から腸管が壊死したり、腸管が破裂して腹膜炎を起こしたりと致命的となる場合もあります。 また、腸内の細菌が血管内に侵入して敗血症になると、重篤化してしまいます。 発症頻度はそれほど高くはありませんが、高齢の男性に起こりやすいといわれています。 高齢者は大腸の動きが弱いため便秘を起こしやすく、腸壁も薄くなるので便がたまりやすい傾向にあります。 更に、男性は骨盤が狭く、ねじれた腸が自然に戻るスペースが少ないため、女性より起こりやすいと考えられています。
先天的な要因としては、結腸過長症、
S状結腸間膜過長症、腸管回転異常などがあります。
後天的な要因としては、慢性的な便秘、薬物の連用、
手術後の腸管の癒着、妊娠、高齢者、精神疾患による薬の服用、
S状結腸軸捻症、炎症性の腸疾患(潰瘍性大腸炎、腸チフスなど)などです。
高齢になると腸の蠕動の働きの低下により便秘傾向になります。
便が排出されずにS状結腸へ貯留し、負担がかる事により腸が捻じれてしまいます。
また、加齢に伴って脂肪が減少することで、臓器が移動しやすくもなります。
臓器が移動することで腸管の緊張がゆるんで常習の便秘が起こったり、
腸管が過長したり、慢性腸間膜炎などが続発したりします。
その結果、腸捻転に繋がると考えられます。
向精神薬の服用がなぜ関係するかというと、腸の蠕動運動が停滞したり、
便意や痛みを感じにくくなったりしていることが影響していると考えられています。
主な症状は、腹部膨満感・嘔吐・便秘・激しい腹痛・
吐き気・排ガスの停止・発熱・頻脈などです。
痛みは多くの場合突然始まり、軽いものから激痛を伴うもの、
波のように強弱を繰り返して持続的に続くこともあります。
吐き気や嘔吐は初期からみられます。
閉塞部位が口に近いほど、嘔吐の出現は早く、頻繁に起こります。
閉塞部位が腸に近いほど、糞臭を帯びてきます。
突然、腹部の激しい痛みが出現し、吐き気、
嘔吐を伴ったショック状態に陥ることもあります。
糞便を吐くこともあり、命に関わることもあるため、
多くが緊急手術となります。
腸管の壊死という危険性がある怖い病気であるため、
もしかしてと思ったら早めの治療が必要です。
ただし高齢者は痛みを感じない人も多いです。
嘔吐や腹痛などの激しい症状が出ていなくても、
便秘をしていてお腹がはるのにおならが全く出ないなど、
異変があれば受診をしてください。
腸の状態を把握するために、複数の検査を行います。
結果によって、具体的な治療の方法を決めていきます。
腸の捻じれや腸内のガス、消化液の状態をみます。
腸の捻じれや腸内のガス、消化液の状態をみます。
穿孔の有無を確認することもできます。
粘膜の浮腫みや充血、潰瘍や出血、壊死してないかなどの様子を観察します。
循環障害の有無や、内視鏡が通過できるかどうかの確認もします。
腸捻転の場所や緊急度に応じて治療法が変わってきます。
腸管組織の壊死や腹膜炎のない初期の状態であれば
大腸内視鏡による減圧・整復治療が選択されます。
腸管内のガスと内容物を吸いとって減圧しつつ、
X線透視下で内視鏡を挿入して、ねじれを解消します。
内視鏡的整復の成功率は75~90%と高いです。
しかし、一度伸びてしまった腸管は短期間で再発することも多いため、
手術リスクが高くなければ、再発防止を目的とした
外科的根治手術が検討されることも少なくありません。
内視鏡が通過できず、腸管粘膜に壊死や潰瘍、
出血などが認められる場合は、緊急開腹手術が行われます。
また、内視鏡による整復治療が不成功だった場合も、
緊急開腹手術を行います。
急ぎ処置をしないと穿孔の危険もあることと、
腸捻転は全身状態が急激に悪化する可能性があるからです。
根治手術は、腸の捻じれを直したり、
癒着部分の剥離や伸びた腸管20~30㎝ほどの切除が行われます。
術後の再発率は5%以下という報告もあります。
しかし、高齢者には開腹手術より腹腔鏡下手術の方が、
回復が早く、術後の負担が少ないため、推奨されています。