肺の中や気管支には、基本的に細菌やウイルスは存在していません。
しかし、その肺の中に細菌やウイルスなどなんらかの病原性微生物が侵入し感染することで、
高熱や咳、痰、呼吸困難などの症状が起きることを肺炎といいます。
肺炎には、感染性の肺炎と、非感染性の肺炎があります。
感染性の肺炎は、細菌やウイルス、真菌など、感染源を吸い込んでおこります。
非感染性の肺炎は、薬剤やアレルギー、その他の病気などが原因になるものです。
肺炎の大部分は、前者の感染性肺炎です。
高齢になると肺炎にかかりやすく、重症化しやすいです。
日本では高齢化の進行に伴い、H23年度では死因の第三位になっています。
感染性の肺炎を起こす病原微生物は大きくわけて
「細菌」「ウイルス」「マイコプラズマ」「真菌」の4種類にわけられます。
一般的に多いのは、細菌やウイルスによる肺炎です。
細菌には、ブドウ球菌、肺炎球菌、インフルエンザ菌などがあり、
ウイルスには、インフルエンザウイルス、コロナウィルス、アデノウイルス、
麻疹ウイルスなどがあります。
その中でも特に一番多く見られるのが、肺炎球菌によるものです。
鼻や口の中には様々な常在菌が存在しています。
常に気道や肺はそれらの細菌などを吸い込もうとしますが、
通常ならば喉で排除されたり、肺の防御機能によって処理されたりします。
しかし、のどに炎症が起こっていたり、体力が落ちていたりして、
免疫力が低下しているときに、病原菌が肺に入ってしまい炎症を起こしてしまいます。
また、大量の細菌が吸い込まれて、正常の防御機能では対応できないときや、
特に感染性の強い微生物が侵入したときも炎症が起こることがあります。
その他、高齢者によく見られるのが誤嚥性肺炎です。
誤嚥とは食べ物や唾液が食道ではなく隣の気管に入ることです。
食道の隣にある肺に繋がる器官に間違って食物や唾液が流れ込んでしまい、
そこに含まれていた細菌から肺炎が起こりやすくなることを誤嚥性肺炎といいます。
年齢を重ねると起こりやすくなる原因は、私たちはもともと誤嚥を防ぐ機能が備わっています。
しかし、老化とともに食べ物や飲み物を飲み込む力が衰えるからです。
肺炎で最もよくみられる症状は、発熱や激しい咳、息切れや息苦しさなどです。
他にだるさや倦怠感、胸や喉の痛み、耳や関節の痛み、
鼻水や痰、呼吸時に息が「ゼーゼー」「ヒューヒュー」と鳴る症状があらわれることもあります。
細菌性の肺炎では、黄色や緑色の痰が出ることが多いです。
特に37~38°C以上の発熱があり、1分間に24回以上の頻呼吸、
そして1分間に100回以上の心拍数があれば肺炎の可能性が高いとされています。
重症になると水分がとれずに脱水になったり、呼吸が速くなったりすることや、
呼吸困難になり、酸素吸入が必要になるケースもあります。
風邪と症状は似ていますが、風邪は通常数日で軽くなる病気です。
高熱と激しい咳が1週間近く続く場合や、呼吸が苦しかったり、
呼吸時に胸が痛かったりする場合は、肺炎の可能性があります。
ただし、子どもや高齢者では典型的な症状が出にくい場合もあります。
肺炎とは考えにくい症状だけが出る場合もあるため、
気づいた時には重症化していることも少なくありません。
いつもと様子がおかしいと思った場合、医療機関を受診してください。
まずは聴診で肺に特徴的な雑音があるかどうかを確認します。
この後、
胸部エックス線検査で画像診断を行い、
浸潤影と呼ばれる影が確認されれば肺炎と診断されます。
他にCT検査を使用することもあります。
CT検査では、通常の胸部エックス線検査では発見が難しいような
影を見つけることができます。
また、胸部エックス線検査で肺に影があることはわかっても、
症状の判断が難しい場合にも使用されます。
例えば、一般的な肺炎か、結核なのか、もしくは癌なのかの判断を行います。
また、外来で治療できる程度の軽症の肺炎なのか、
緊急入院を要する重症の肺炎なのかといった詳細な判断が必要なときも使用します。
炎症の程度や血中の酸素量を調べるために血液検査を行うこともあります。
その他、肺炎の原因微生物を特定するために痰の検査もしばしば行われます。
原因の微生物を特定する理由は、原因が違えば使用する薬剤など治療方法が変わってくるからです。
原因菌の特定が難しいときや、重症度が高く緊急を要するときは、
肺組織の病理検査を行うケースもあります。
薬物による治療が主となります。
細菌性肺炎やマイコプラズマ肺炎に対しては、抗生物質を使います。
そしてウイルス性肺炎には抗ウイルス剤を使用します。
しかし、抗ウイルス剤が効かないウイルス性肺炎なども存在します。
その場合は、対症療法がおこなわれます。
対症療法とは、症状を緩和させる治療法です。
痰の排出を促進させて咳を止める薬や解熱剤などを使用します。
健康な若い人や軽症の肺炎であれば通院で治療が可能な場合もあります。
しかし、重症の場合や小さな子ども、高齢者などでは、
基本的には入院して治療が行われることが多いです。
特に誤嚥が関係している肺炎の場合は、肺炎を繰り返さないためにも、
治療時には絶飲や絶食をすることも必要です。