統合失調症とは、精神疾患の一種です。
考えがまとまらなくなり、意欲が低下・欠如したり妄想に固執したり、
幻想に怯えたりといった症状です。
他の人には聞こえないことが聞こえたり、
見えないものが見えたりといったことだけではなく、
被害妄想に駆られたりするもので、かつては精神分裂症とも呼称されていましたが、
昨今は統合失調症と呼称されています。
統合失調症の原因は定かではありませんが、
脳の神経伝達バランスが崩れることで生じるのではと囁かれています。
他にも、遺伝や環境的な理由から統合失調症になるケースもあれば、
これらが複合的に絡むことで発症するのではとも囁かれています。
例えば、病気になりやすい脆弱性を持つ人が多大なストレスを受けることで
統合失調症を発症するケースも見受けられますが、
いずれにせよ、原因の特定には至っていません。
統合失調症の症状は、大きく3つに分類することができますが、それぞれ症状が異なります。
健康な時には見られなかったものが見られるようになる陽性症状では、
妄想や幻覚、思考障害が起きます。
例えば、テレビを見ていても、「自分のことを話しているのではないか」と妄想したり、
公共施設の監視カメラを見ると「自分のことを監視しているのではないか」と感じるようになったり、
誰もいない場所で声が聞こえたり、物が見えたりします。
また、会話が成立しないほどに混乱しているような状態となるケースも見受けられます。
健康な時にできたことができなくなるタイプの統合失調症が陰性症状です。
喜怒哀楽が出にくくなるので、他人への共感がなくなり、
思考が貧困するので会話の際に、思った言葉が出てこなくなったり、
他人の湾曲的・比喩的表現が理解できなくなります。
また、意欲そのものが欠如するので、自発的な行動がみられなくなります。
やがては自分の世界へと引きこもり、他人とのコミュニケーションを拒絶・排除するようになります。
記憶力、注意力、集中力、判断力など日常生活の中での認知力が低下する状態です。
物を覚えることに時間がかかるようになり、仕事や勉強への集中力が欠如・低下し、
長時間集中できなくなったり、考えをまとめることができなくなったり、
物事の判断もできなくなるなどがこちらに該当します。
妄想や幻聴の有無や継続期間などの問診と家族歴や既往歴などを総合的に判断します。
診断基準として、
世界保健機構の「ICD-10」、
米国精神医学会の「DSM-5」が用いられますが、
他にもCTや血液検査等を行うことで、総合的に検査を行います。
統合失調症は経過状況によって、
前兆期、急性期、消耗期、回復期に分類できます。
前兆期は、眠れなくなったり音に敏感になったりするなど、
統合失調症がその兆候を見せ始める時期です。
急性期には幻聴や妄想を見聞きするようになり、不安を感じやすくなります。
消耗期となると、常に倦怠感があり、意欲もでなければ自信も持てない時期です。
回復期になると気持ちにゆとりが出てくるようになります。
統合失調症の治療は、先に挙げた統合失調症のタイミングによって異なります。
急性期の場合、薬物療法によって症状を抑えます。
消耗期では薬物療法に加えて心理社会的療法を行います。
心理社会的療法には心理教育や生活技能訓練、
作業療法といった実践的な治療がありますが、
いずれも患者の状態に合わせて治療を行います。
特に統合失調症は精神面と密接な関係があります。
患者が嫌だと感じるような治療、
あるいは無理を強いるような治療を行うと、
統合失調症を悪化させてしまいかねません。
あくまでも患者中心の治療を長期的展望のもとで行うことが望ましいです。
短期間で改善させようとすると、どうしても無理を生じ、
患者自身に大きな負担を与えかねません。
統合失調症の治療を辞めてしまった患者の
およそ半数以上が1年から2年以内にかけて再発するとの報告もあります。
そのため、再発防止の一環として投薬治療の継続が重要です。
心理社会的療法を終えたとしても、
投薬を継続することで統合失調症の再発防止につながると考えられています。
統合失調症の治療は患者本人の頑張りだけではなく、周囲の理解も重要です。
統合失調症に無縁の方にとって、
統合失調症の症状は信じられないものもあります。
「会社に行きたくない、または学校を休みたいから嘘をついているのではないか?」と
疑うケースも多々見受けられるのですが、統合失調症は周囲が理解しないと、
患者にとってはストレスになってしまいます。
むしろ、理解されないことがさらに精神を追い詰めることにもなりかねませんので、
周囲の人が統合失調症はどのような症状なのかを理解し、
患者に寄り添った環境を作ることも治療を行う上で大切です。